生物多様性への取り組み

土地とともに、未来を育てる。生物多様性の保全を通じて、持続可能な地域社会の実現に貢献します。

つなぐ、未来を。共に創る。
社会が本当に豊かで、安心して暮らせる未来――
人と人が繋がり、想いと知恵を重ねながら、暮らしを共に創る社会に向かって。
実現のため、土地や水といった“資源”、生き物の“多様性”、それらの「つながり」を
守り、活かしていくことが欠かせません。

なぜ「水」の話から始めるのか

私たちの暮らしや、製造業で使用する水から農業用水、そして飲み水に至るまで、すべてを支えるのが「水」です。この水は、空から降るだけでは安定して利用できません。水源となる森林や土壌が雨を蓄え、浄化し、ゆっくりと川や地下水として私たちに届けてくれるのです。例えば、日本の美しい棚田は、この仕組みの良い例です。棚田は雨水を貯める「小さなダム」として機能し、洪水を防ぎ、地すべりを抑え、その総貯水量は黒部ダムの約4倍にもなります。

しかし、この土地の働きは、土や木だけでは成り立ちません。そこに生きる微生物、植物、昆虫、動物などの多様な生き物が、互いに支え合うことで、水の質と量を守っているのです。これが「生物多様性」の力です。生物多様性が豊かな土地こそが、健全な水資源を生み出す源泉なのです。

棚田の風景と水資源の役割

生物多様性の心臓部
「食物網」の仕組み

生物多様性の本質は、多様な生き物が「食べる・食べられる」という関係で複雑につながる「食物網」にあります。これは一本の鎖ではなく、網の目のようなネットワークで、植物をバッタが食べ、それをカエルや鳥が食べ、死んだ生き物を微生物が分解して土に還す、というサイクルです。この網が複雑であるほど、一部の生き物が減っても他のものが補い、生態系全体のバランスが保たれます。

棚田のような土地では、水田に住むメダカやドジョウ、カエルなどが、この食物網を形成し、水の浄化や土壌の安定に貢献しています。生物多様性が豊かな場所ほど、こうした機能が強く、私たちの水資源を守ってくれるのです。

地球温暖化
静かに崩れるバランス

しかし今、この食物網のバランスが、地球温暖化によって世界中で脅かされています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によれば、このままでは2100年までに世界の平均気温は産業革命以前と比べて約2.8℃上昇すると予測されています。この気温上昇は、生き物の活動時期をずらし、食物網の前提を崩壊させます。

気温上昇は、食料生産の不安定化や水資源の劣化に直結します。この危機に対応するため、世界は温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。生物多様性豊かな森林や土壌は、二酸化炭素を吸収する重要な役割を担っており、生物多様性を守ることは、地球温暖化対策そのものなのです。

地球温暖化の影響

地政学リスクと資源自給
足元の「つながり」を守る重要性

世界情勢の不安定化や資源をめぐる国際的な競争が高まる今、企業の持続可能性は、海外の資源に依存するだけではなく、足元の土地と水、そして生物多様性というローカルな資源基盤の強靭さにかかっています。地政学リスクが増大する中、資源の自給自足を高めることは、企業の安定した運営に直結する、極めて現実的な戦略です。

ネイチャーポジティブ経営
自然をプラスに転じる企業の役割

このような課題に対し、私たち企業に何ができるのでしょうか。その答えが「ネイチャーポジティブ」です。これは、自然の損失を食い止めるだけでなく、積極的に回復させ、プラスに転じさせていこうという新しい考え方です。

工場、住宅、そして世界的な企業が共存する浜松市都田エリアは、まさにこのネイチャーポジティブを実践するための「生きた実験室」です。多様な土地利用が交差するこの場所だからこそ、私たちは地域の一員として、生物多様性を守り、育む具体的な行動を起こす責任と可能性があると考えています。

健康と文化的な生活、自然のつながり

生物多様性がもたらす恩恵は、水や食料といった物質的なものだけではありません。私たちの「健康」や「心の豊かさ」にも深く関わっています。厚生労働省が管轄する地域保健法では、住民の健康を守る施策の中に、安全な水を供給するための水道法が含まれており、豊かな自然環境が公衆衛生の基盤であることが示されています。

さらに、自然には「保健休養機能」もあります。例えば、美しく管理された田園風景や、木々が立ち並ぶ小道を歩くと、心が安らぎ、リフレッシュすることができます。これは、豊かな生物多様性が育む清らかな水や澄んだ空気が、都会での生活で疲れた心身を癒す力を持っているからです。自然とのふれあいは、私たちの「厚生」、すなわち文化的な暮らしの質を高める上で、欠かすことのできない要素なのです。

また、自然は「社会教育機能」も果たします。農作業の体験や、豊かな自然環境にすむ動物や植物とのふれあいを通じて、人間と自然との関わりを学ぶとともに、自然の恵みを生かす知恵や工夫を学び、身につけることが出来ます。

こうした取り組みの一環として、愛管株式会社では、都田エリアの自然共生サイト登録に向けた活動を進めています。この場所は、生き物の写真や観察記録を投稿・共有できるコミュニティサービスを開発しているIKIMON株式会社と連携し、「すべての人が、生き物観察を楽しめる社会」の実現を目指す実証フィールドとしても位置づけられています。企業活動や地域の暮らしのなかに自然とのつながりを育むことで、自然の価値を身近に感じながら、多世代がともに学び合える場所づくりを進めています。

都田から始める、未来への具体的なアクション

私たちは、工場・住宅・農地がひとつの地域に集まる「都田(みやこだ)」で、毎日の仕事を通じて、自然と人が一緒に生きていける社会を目指しています。
技術の力でムダをなくし、働く人にやさしい環境を整え、それが地域の人たちや未来の世代にもいい影響を広げていく――
そんな“当たり前の積み重ね”が、生き物のすみかを守り、地域全体を元気にしていくと信じています。

自然共生サイトの対象

自然と人が安心してすごせる場所づくり

愛管株式会社では、都田エリアの畑や遊休地を「自然共生サイト」として申請中です。この場所は、生き物も人も安心して過ごせる空間であると同時に、農業そのものが持つカーボンオフセットのしくみを、見て・感じて・学べる実証フィールドでもあります。農業では、植物が吸収したCO₂を有機物として土壌にとどめることで、自然と炭素を固定する働きが生まれます。さらに私たちは、炭を土に混ぜて長期的に炭素を蓄える「バイオ炭農法」も導入し、土の力を高めながら、より確実なカーボン固定を目指しています。こうした取り組みは、地域や企業のCO₂削減の“見える化”にもつながり、視察やセミナーの受け入れを通じて、環境への意識を高める学びの場としても広がりを見せています。敷地内のレストランでは、この土地で育てた作物を料理として提供しており、「食べること」そのものが、自然とのつながりを体感する機会となっています。訪れるすべての人に、共生と循環の未来を五感で伝える場を、都田から育てていきます。

3Dスキャン技術の活用イメージ

ムダを減らして、自然にも人にもやさしく

現場の構造や地形を3Dスキャンで高精度に“見える化”することで、配管や設備の設置位置を正確に把握し、的確な工事を行うしくみを整えています。これにより、ムダな開発や改修が不要になり、自然環境への影響も最小限に。さらに、作業手順の精度が上がることで、現場の安全性や作業効率も大きく向上します。目に見えないムリ・ムダ・ムラを減らし、人にも地球にもやさしい現場づくりを、テクノロジーの力で実現しています。

次世代への教育風景

興味が芽ばえ、気付きが育つ場所。

土をさわって「冷たいね」と笑い、虫を見つけて「生きてる!」と目を輝かせる――そんな小さな“興味”が、子どもたちの中に芽ばえた瞬間を、私たちは何より大切にしています。私たちの保育園では、自然とふれあい、人と関わる中で、子どもたちが自ら「気付き」「考え」「感じる」時間を何より大切にしています。この学びは、子どもだけのものではありません。一緒に過ごす家族や、地域の方々、大企業の仲間たちにも広がっていく「共育」の輪。私たちは、この場所が地域みんなで子どもたちの“生きる力”を育む拠点になることを目指しています。

管工事現場

働く人にやさしい現場が地域を元気にする

配管や設備工事は、地域の暮らしや産業に欠かせないインフラをつくる仕事です。私たちは、作業しやすく安全な現場をつくるために、現場ごとの状況を読み取り、細かな調整や改善を積み重ねる“エンジニアリングのプロフェッショナル”として取り組んでいます。そうした現場には、人が集まり、技術が磨かれ、若手も育ちやすくなります。働く人にとってやさしい現場づくりは、結果として地域を支える力を生み出し、未来への投資にもなっています。

農園とレストランの連携イメージ

「おいしい」から自然を好きになる

私たちのレストランでは、自社農園や地域の自然の恵みを大切にした料理をお届けしています。旬の食材をそのままに、ていねいに仕立てる一皿には、土や人、季節の物語が詰まっています。「この野菜、どこで育ったの?」「どんな人がつくっているんだろう?」そんな興味が芽ばえたとき、食を通じて自然や地域とのつながりに気付くきっかけが生まれます。その一皿が、食べる人の心を動かし、作り手のよろこびにもつながっていく――おいしさが循環する、そんなレストランを目指しています。

私たちの決意
土地とともに、未来を育てる。

持続可能な社会の実現は、遠い理想ではなく、足元の土地を見つめ、自然と人が関わり合いながら暮らすことから始まると、私たちは信じています。畑を耕し、命を育て、技術を磨き、人と人とが支え合う。この積み重ねが、地域の力を育み、未来をひらく確かな礎になります。自然の恵みとともに生き、つくり、学び、つながる。その営みの先にある未来を、私たちは地域の皆さんと共につくっていきます。

愛管株式会社
代表取締役 中村 将義

参考文献

  1. 農林水産省. 「棚田の持つ多面的機能」. https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/index.html
  2. 環境省. 「「生物多様性国家戦略2023-2030」. https://www.env.go.jp/content/000262619.pdf
  3. IPCC. (2021). 『気候変動2021:自然科学的根拠』. https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/
  4. 環境省. 「ネイチャーポジティブ」. https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/eye/20240214.html
  5. 厚生労働省. 「地域保健法」. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78301000&dataType=0&pageNo=1

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