1. 文化財保護における「記録」の重要性と限界
日本全国に存在する歴史的建造物やお城、神社仏閣、仏像、土器などの文化財は、地震や火災といった自然災害、あるいは経年劣化によって、常に永遠に失われてしまうリスクに晒されています。首里城の火災やノートルダム大聖堂の火災に見られるように、どれだけ厳重に管理していても万が一の事態を防ぎ切ることは困難です。
そのため、文化財保護において最も重要なのが「現状の正確な形状を記録として残しておくこと」です。 従来は実測(職人による計測)や写真、拓本などが用いられてきましたが、手作業での測量には限界があり、数百年前に作られた複雑な木組みや仏像の繊細な表情を完全に図面化することは不可能でした。また、触れること自体が文化財を傷つけるリスク(接触リスク)を伴います。
2. 非接触かつ超高精度で記録する「3Dスキャン」
そこで近年、文化財の記録保存(デジタルアーカイブ)の分野で標準技術となりつつあるのが、対象物に一切触れることなくミリ単位の立体形状を記録できる「非接触3Dレーザースキャン」および「フォトグラメトリ」です。
レーザースキャナーを用いれば、対象となる建築物や彫刻に対してレーザーを照射するだけで、その表面の凹凸を数百万・数千万という「点の集合体(点群データ)」としてコンピュータ上に取り込むことができます。 さらに、カラーカメラを搭載したスキャナーであれば、形状だけでなく「色(テクスチャ)」も同時に取得できるため、まるで実物をそのままパソコンの中に閉じ込めたような、極めてリアルな「デジタルツイン」を生成することが可能です。
3. 文化財3Dデジタルアーカイブの3つの活用法
取得した文化財の3Dデータは、単なる「記録」にとどまらず、様々な形で活用されています。
- 修復・復元の絶対的な設計図 もし災害等で文化財が焼失・破損してしまった場合でも、焼失前のミリ単位の3Dデータが残っていれば、それを元に高い精度で復元工事を行うことができます。実際にノートルダム大聖堂の修復でも、火災前に撮影されていた3Dスキャンデータが決定的な役割を果たしました。
- 研究・解析(バーチャル解剖) 仏像の彫りの深さや、建造物のわずかな傾きなどを、画面上で拡大して様々な角度から検証できます。年月の経過に合わせて定期的にスキャンを行えば、木材の反りや沈下などの「経年変化」をミリ単位で解析できるようになります。
- VR/メタバース・観光・教育コンテンツ 取得した3Dモデルをゲームエンジンを通し、スマートフォンやVRゴーグルで閲覧できるバーチャル博物館のコンテンツへと変換できます。普段は立ち入れない国宝の内部を自由に歩き回るような体験を、世界中の人々に提供することが可能になります。
4. 文化財スキャンの難しさ(反射・広大さ・複雑さ)
文化財の3Dスキャンは、工場やビルの計測に比べて特有の難しさがあります。
巨大な城郭や寺院の敷地全体を対象とする場合、途方もない回数のスキャンが必要になります。また、仏像の金箔や、漆(うるし)が塗られた黒光りする表面は、レーザー光が乱反射・吸収されてしまい、綺麗に形状が取得できない(ノイズになる)ことがあります。工業製品のように「スキャンしやすいように白い粉(現像液)をスプレーする」といったことは文化財相手には絶対にできないため、機材の選定や計測角度の工夫など、極めて高度な専門ノウハウが求められます。
5. 貴重な対象物のスキャンなら、機材のプロフェッショナルである愛管へ
「地元の貴重な大仏をデジタルデータとして残したい」「古民家を移築するために完璧な記録を取りたい」。 そんな文化財や歴史的建造物のデジタルアーカイブ化は、最新の3Dスキャン機材と現場運用ノウハウを持つ愛管株式会社のワンストップ・3Dスキャンサービスへご相談ください。
対象物を絶対に傷つけない非接触の計測において、私たちは最適な機材の「使い分け」をご提案します。 巨大な寺院や歴史的建造物の空間全体を把握するには、屋外・長距離での計測に強く、ミリ単位の精度を誇るハイエンド固定型スキャナー「Trimble X7」を使用します。 一方、仏像の細かな衣服のシワや木彫りの装飾、あるいは建物の狭い軒下など、大きな機材が入り込めない緻密な対象物に対しては、網目を縫うように自在に取り回せる高精度ハンディ型スキャナー「3DMakerpro Eagle Max」を使い、対象物の表面を滑らかにトレースして死角ゼロでデータ化します。
過酷な現場や、細心の注意が求められる文化財に対しても、私たちは必要とあらば30回以上もの果てしない機材の設置変更(盛り替え)を行い、半日以上かけて空間・対象物の情報をしゃぶり尽くす「本気の計測」を実施します。
取得した大容量のデータは自社内で「InfiPoints」等の専用ソフトを用いて美しい3D点群モデルへとノイズ処理・最適化を行い、お客様の用途(研究用アーカイブ、VR素材など)に応じた最適な形式で納品いたします。
機材購入のハードルを感じることなく、プロの計測チームを外注としてご活用いただけます。「面積や規模」に応じた明朗な料金体系で全国へ出張いたしますので、残したい貴重な対象物があれば、愛管株式会社へお気軽にご連絡ください。
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参考文献
- ICOMOS “Principles for the Recording of Monuments, Groups of Buildings and Sites” — 文化遺産のデジタル記録に関する国際指針として参照
- UNESCO Digital Heritage initiatives — 文化遺産の3Dデジタルアーカイブ推進として参照