1. 日本の製造業を支える「ミリ単位未満」の戦い

自動車産業をはじめとする日本の製造業は、世界でも類を見ない厳しい品質基準によってその競争力を維持しています。エンジン部品からボディのプレス金型、さらには内装の樹脂パーツに至るまで、求められる公差(許容される寸法のブレ)は1ミリの100分の1(0.01mm)未満となることも珍しくありません。ドイツの自動車メーカーでは、VDI/VDE 2634(光学式3D測定システムの精度規格)に基づく品質管理プロセスの中で、3Dスキャンによるインライン検査がすでに標準的なワークフローとして定着しています。

これまでの品質管理や寸法検査では、ノギスやマイクロメーターによる手作業での抜き打ち検査、あるいはプローブ(探針)を部品に直接当てて測る「接触式三次元測定機」が主流でした。しかし、これらは測定に時間がかかりすぎる上、車のボディのような滑らかな「自由曲面」全体の歪み具合を直感的に把握するのは困難でした。

2. 3Dスキャンによる「面」の全数検査プロセス

ここで製造現場の品質管理に革命を起こしているのが、光やレーザーを用いた非接触3Dスキャナー(光学式三次元測定機)です。

3Dスキャナーは、対象となる部品や金型にレーザーや縞模様の光(パターン光)を照射し、一瞬のうちに数百万の座標点を取得します。これにより部品を「点」ではなく「面全体(3Dモデル)」として丸ごとデジタル化できるのです。

寸法検査のプロセスは以下のようになります。

  1. 製造ラインから上がってきた量産部品を3Dスキャンする。
  2. 取得したスキャンデータ(実際の形状)を、設計時の「3DCADデータ(理想の形状)」とパソコン上で重ね合わせる。
  3. CADデータに対して、実際の部品が「どこが数ミリ出っ張っているか」「どこがへこんでいるか」を、青や赤の色分け(カラーマップ/ヒートマップ)で画面上に即座に表示する。

これにより、「全体的に少し右に歪んで成型されている」といった傾向を現場の作業員が直感的に理解でき、金型の修正や製造ラインの微調整へ瞬時にフィードバックできるようになります。

3. 金型の「リバースエンジニアリング(再生)」

自動車産業などでは、製品を生み出すための「金型」そのものの管理も重大な課題です。 何万回もプレスや射出成型を繰り返した金型は、摩擦により徐々に摩耗していきます。熟練の職人が手作業で削って微調整(チューニング)を行った金型の最終形状は、元のCAD設計図とは異なっており、「正解の図面」が存在しない状態(職人の頭の中にしかない状態)になっていることがよくあります。

この「職人が仕上げた最高の金型」を3Dスキャナーで丸ごとスキャンし、パソコン上でCADデータに逆変換しておくことで、職人の暗黙知を完全なデジタルデータとして保存することができます。これをリバースエンジニアリングと呼びます。金型が割れてしまった場合でも、このデータがあれば即座にまったく同じ金型を復元することが可能です。

4. 自動化ラインへの組み込み(インライン3D検査)

さらに先進的な工場では、3Dスキャナーを産業用ロボットの腕(アーム)の先端に取り付け、生産ラインを流れてくる部品を全自動で次々とスキャンし、良品・不良品を自動判定する「インライン計測(全数自動検査)」の導入も進んでいます。これにより、検査工程のボトルネックが解消され、圧倒的な生産性と品質保証の両立が実現しています。

5. 製造ラインや工場の空間まるごとデジタル化はお任せください

部品単品の3Dスキャンや検査については、製造業各社が自社で卓上スキャナー等を導入して行うのが一般的です。しかし、製造業における「図面がない」問題は、小さな部品にとどまりません。

「新しい自動車部品の生産ライン(巨大なロボット群)を導入したいが、今の工場の空きスペースに収まるかわからない」「既存の配管をどう避けてコンベアを設置すべきか図面がない」。このような工場・プラント設備の「空間レイアウト」の寸法計測となった瞬間、部品用の小さなスキャナーでは全く歯が立たなくなります。

工場等の広大な空間・設備の3Dスキャン測量や図面化でお困りなら、ぜひ愛管株式会社のワンストップ・3Dスキャンサービスをご利用ください。

私たちは、建設測量市場で最高峰の精度を誇る地上型レーザースキャナー「Trimble X7」を持ち込み、工場の建屋や入り組んだ生産ラインの周囲空間をミリ単位で高精度に点群化(デジタル化)します。 さらに、巨大なロボットの裏側や、密集した配管の隙間など、固定機では死角になる場所には、機動力に優れたハンディ型スキャナー「3DMakerpro Eagle Max」を併用するハイブリッド計測を実行。複雑な工場内であっても、30回以上の徹底した機材移動(盛り替え)を行い、半日以上かけて空間を完全データ化します。

取得した空間の点群データは、自社オフィスにて「InfiPoints」で最適化し、業界標準CADソフトを用いた「正確な3DCAD図面(Rebro等)」に変換してお渡しします(リバースモデリング)。お客様は、この最新の空間図面の中に新しい製造ラインのCADモデルを配置することで、パソコン上で完璧な干渉チェック・レイアウトシミュレーションが可能になります。

全ての工程を自社内製化しているため、面積に応じた明朗な料金体系で全国の工場へ出張いたします。生産設備の確実な改修・レイアウト変更は、愛管の3Dスキャンにお任せください。

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参考文献

  • VDI/VDE 2634 “Optical 3D measuring systems” — 自動車製造における3D測定システムの精度規格として参照
  • ISO/TS 16949 (現IATF 16949) — 自動車産業の品質マネジメントシステムとして参照