1. 究極のモノづくり「スキャンして、プリントする」
現代のデジタル・ファブリケーション(デジタル工作機器を用いたモノづくり)において最もパワフルな組み合わせが、「3Dスキャナー」と「3Dプリンター」の連携です。
現実世界のモノの形を「3Dスキャナー」で読み取ってデジタルデータ化し、そのデータを元に「3Dプリンター」で全く同じ形状のもの、あるいは改良を加えた形状のものを現実世界に出力(立体造形)する。このプロセスは、文字や写真をコピー機でスキャンして印刷することの「三次元(立体)バージョン」と言えます。 製造業の部品複製、医療分野(一人ひとりの骨格に合わせた義肢やインプラントの作成)、さらにはフィギュアや文化財のレプリカ作成まで、あらゆる分野でこの「スキャン・トゥ・プリント」のワークフローが導入されています。
2. スキャンデータを直接プリントできない理由(最大の罠)
「3Dスキャナーで読み取れば、そのままボタン一つで3Dプリンターから出力できる」と考えられがちですが、実はここに大きな誤解とハードルが存在します。
3Dスキャナーが現実のモノから読み取って保存する「点群データ」は、単なる宙に浮いた「座標の点の集まり(点座標のリスト)」に過ぎません。点と点の間に「面」が存在しないため、立体物を層状に出力していく3Dプリンターのソフトは、これを「立体物」として認識できず、エラーになってしまいます。
そのため、スキャンしたデータをプリントするためには、点を面で繋ぎ合わせて「ポリゴン(多角形)」の殻を作り、さらにその殻を「中身の詰まったソリッドモデル(実体)」へと変換する、専門的なソフトウェアによる「データ変換・モデリング」の中間工程が絶対に必要になります。
3. スキャンからプリントまでの「3つのステップ」
連携のワークフローは、大きく3つの工程に分かれます。
Step1:3Dスキャン(点群・メッシュの取得)
ハンディスキャナー等を用いて対象物をスキャンします。最近のスキャナー付属ソフトは優秀で、スキャン直後の無数の「点(点群)」を、ソフト内で自動的に三角形の細かい面で繋ぎ合わせた「ポリゴンメッシュ(STLやOBJ形式)」に変換(メッシュ化)して出力してくれます。
Step2:データ修正とCAD変換(リバースエンジニアリング)
スキャンしただけのメッシュデータは、表面がザラザラしていたり、スキャンの死角になった部分に「穴」が空いていたりします。 このままではプリントに失敗するため、専用のリバースエンジニアリングソフト(Geomagic Design Xなど)を使い、データの穴を塞いで綺麗にしたり、より精密でなめらかな「CADデータ(STEPやIGES形式)」へと形をなぞって描き起こします。
Step3:スライサーソフトで出力設定とプリント
完成した綺麗なSTLデータ等を、3Dプリンター専用の「スライサーソフト」に読み込みます。このソフトは、3Dモデルを水平に薄くスライスし、プリンターのヘッドがどう動いて素材を積み上げていくかの命令(Gコード)を作成します。これを3Dプリンターに送信し、実際に造形を開始します。
4. パーソナル用途と産業用途の大きな違い
個人の趣味でフィギュアや簡単な小物をコピーする場合、安価なスキャナーと無料のメッシュ編集ソフト(MeshmixerやBlenderなど)、数万円の3Dプリンターを使えば、手軽に体験することができます。
しかし、工場や産業機械の「部品」を複製・再設計する場合、寸法精度が0.01mm単位で求められます。そのため、数百万のハイエンドスキャナーで計測し、数百万円クラスのプロ用リバースソフトで完璧なCADデータを作成した上で、金属をプリントできる超高額な産業用3Dプリンターで出力するという、極めて専門的で高コストな環境が必要になります。なお、愛管では3Dスキャンによる計測とCADデータ作成までを専門としており、3Dプリンターによる出力は対応範囲外となります。
5. 工場設備・配管の「データ変換・図面化」なら愛管にお任せください
部品単体のスキャンとプリントは専門メーカーに依頼するのが一般的ですが、そのスケールが「工場やプラント全体の空間」や「建物中に這い回る巨大な配管」になった場合、対応できる業者は限られてきます。「工場の設備を最新型のものに入れ替えたいが、既存の配管をどう避けて設計すればいいか、図面がない」といった空間設計の課題です。
こうした「空間の点群データから、CADデータへの変換(図面化)」に強みを持つのが、愛管株式会社のワンストップ・3Dスキャンサービスです。
長距離・広空間の計測に圧倒的な信頼を持つレーザースキャナー「Trimble X7」と、固定機では届かない配管の裏側などの死角を補うハンディ型スキャナー「3DMakerpro Eagle Max」をハイブリッドに運用。例えば200平米のプラント設備であれば、30回以上スキャナーを移動(盛り替え)させながら半日以上かけて空間を完全スキャンします。
私たちの真価は、持ち帰った膨大な点群データ(無数の点)を、自社の専門オフィスPCにて「InfiPoints」等のソフトを駆使し、設備改修の設計にそのまま使える配管のCADデータ(Rebro等の形式)へと完璧にモデリング変換(図面化)してお渡しできる点にあります。
3Dプリンターでの出力と同じように、「点群だけ」ではシミュレーションや工事設計はできません。現場の過酷なスキャンから、高度なCADデータ変換までを完全内製化し、中間マージンなしの「面積・階数ベース」による明朗会計で全国対応いたします。図面のない現場の現況CAD化は、愛管の3Dスキャンサービスへご相談ください。
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参考文献
- ISO/ASTM 52915 “Specification for additive manufacturing file format (AMF)”